GO / Why do you play Pearl?
その圧倒的な存在感で、ラウドシーンの中でのドラマーの立ち位置を確固たるものに押し上げたと言っても過言では無いGO氏。現在もそのアグレッシヴなパフォーマンスを繰り広げているドラマー/GO氏がPearlドラムを使い続ける”理由”を聞いてみた。
パールスタッフ(以下:Pearl):テーマが「Why do you play Pearl?」ということで、まずはPearlドラムを使い出したきっかけを教えてください。
GO:いっぱいありますけど、昔はただのロック少年だったので好きなバンドのドラマーにPearlが多かったのが一番の理由な気がします。ロックっていうと当時は“不良で悪い人たちが音を出してるのがカッコイイ”ってイメージで、そのイメージが僕にとってはPearlだったんですよ。僕らの世代はみんなそうなんじゃないかな。直接Pearlを紹介してくれたのはSHIRA(BOMB FACTORY)だったけど、ドラマー仲間たちがたくさんPearlには居たんで、それもキッカケの一つなのかな。
Pearl:一番好きなドラマーは誰ですか?
GO:沢山いますけど…。影響を色濃く受けたって意味合いではPANTERAのヴィニー(ポール)ですかね。物心ついて、プロを意識してバンドで売れるぞって思っていた10代の頃、パンクも好きだったりメタルも好きだったり、いろいろ浮気性な時期に“オレやっぱりメタルだわ”って思わせてくれたのはPANTERAだったんですね。彼らの存在は本当に絶対的で…。ドラマーというよりはバンドが好きで、彼らの存在は自分の中でも本当に大きいですね。今でこそ当たり前のサウンドになりましたけど、“バンドってどうしたらカッコイイサウンドになるんだろう”って四六時中考える時に、それらを全部クリアしたPANTERAっていうバンドが出てきたもんですから笑。これは敵わないなって思いましたし、SUNS OWLにも多大な影響を与えましたね。
Pearl:パールドラムの印象についてお聞かせください。
GO:ドラムを”教える”を仕事にしていたので、いろいろなドラムを叩く機会があったんですけど、Pearlは総合点が一番高いですね。音だけで言うと好みが別れるのかもしれないけど、機能性や扱いやすさ、あとレスポンスというか音の立ち上がりがPearlは圧倒的に早いような気がします。スティックで叩いてから太鼓が鳴るのが早いから叩いてて気持ちが良いんですよね。僕らミュージシャン、職人ドラマーは、“今日会った人に絶対良いって言わせなきゃいけない職業”じゃないですか笑。その場合、やっぱりレスポンスとかマイク乗りとかってすごい重要なんですよ。たまに他のメーカーでもチューニング如何によっては、声でいうとディストーションが掛かったような、すごく味のあるドラムに出会ったこともありますけど、それってその個体が良いだけで総合的な良さでは無いんですよね。
Pearl:ドラムやシンバル選びの基準はありますか?
GO:シンバルもいろいろなメーカーがありますけど、バンド側で気持ち良い音とディレクターが好む音って絶対的に違ってくるんですよね。そこまでドラムに詳しくない人がディレクターになった時には、パンチのある音を聴かせてあげるとOKが出やすいから、やっぱりSABIANになることが多いですね。これは僕の経験値からして絶対です笑。僕のドラムスタイルも多分に関係してるんでしょうけど笑。あとは、“誰を対象に聴かせるか”で機材も全部変えてますね。素人さんに聴かせる時にはこうとか、シビアな現場だとこうみたいな。僕はいろんな立場があるので、自分の見映えとライブでの出音と音源での録り音と、この3つを主な基準として機材を絞ってますね。
(機材は)洋服と一緒だと思うんです。寒い時は服を着れば良いじゃないですか?でもTシャツを1枚しか持ってなかったら、そもそも上に着られないし…。それと一緒で、最初にある程度低音とか音量が出るセットを持っておけば後は引き算の作業なんですよ。インチの小さい、音量も低音も稼げないセットを持ってしまうと足す作業ができないじゃないですか。ライブでもRECでもマイナスしていけばいいだけなんで、僕はあれだけ太い音が出るセットを最初に選んでるんですよ。
※GO愛用のMastersのセット。オールマイティーな鳴りが特長の素材と言われるメイプルシェルを使用したセット。
Pearl:機材に関して特にこだわっている部分はありますか?
GO:あると言えばあるし、無いと言えば無いんですよね笑。ドラムを叩く職人という立場になっちゃうと、機材に関しては個人の意見を言ってもしょうがないことが多くて…。自分の好みを出したところでほとんどの人が気付かないって事も多いですし、これって自己満なんだなっていうのは20年くらい前に通過しちゃったんですよね笑。年相応ですよ、ある意味。ドラムだけで考えてたら良いバンドサウンドは出せないってのが答えなんですよ。一緒に音を出す人は一体どのベーシストで、どのギタリストで、歌う人は誰なんだっていう、ここが全てなんですよ。だから場所や一緒に音を出す人によっては、機材にこだわった分だけマイナスに働く時もあるかもしれないんですよね。だから(機材は)現場によりますけど正直何でも良いよっていう感覚もあるし、ペダルさえあればいつでもどこでも行くよっていうスタイルにいつの間にかシフトしてましたね。良くも悪くもみんなが好む音が分かってしまうので、万人が好むReference Steelのスネアは持っていくことが多いかな。
※SADS公演でのGO愛用のReference Steelのスネアドラム。純正のヘッドからパワーストローク3のヘッドに張り替えることにより、さらにパワー感を増したセッティング。スティックは110シリーズのオークを使用している。
Pearl:普段はどういった練習をされていますか?
GO:練習…あまりしないんですよね笑。とはいえ、集中してイメージトレーニングする時はあります。カッコイイドラマーを観た後は、何となく思い出して自分でできそうなフレーズを搔い摘んでイメージだけで構築していくみたいな。それで自分の手癖に寄り添って新しいフィルを開発したりとか…。あとは授業で譜面を書いてる時にフレーズの順番を入れ替えたりとか、元のフレーズから少し変えてみて自分のものにしていく作業もしますね。
Pearl:GOさんは楽器の調整をご自身でされていますが、どのようにして身に付ましたか?
GO:ステージに立つ数もそうですし講師業が長いってのもありますけど、自分が集中して見て覚える、やってみるに尽きますね。5年6年叩いてるヘッドでチューニングの授業をやらないといけない時に、良い音って作りようがないじゃないですか。でもダメな音を覚えさせることはできるし、その状態からそこそこ聴かせられる音に仕上げる技術は教えられるというか…。もうそういう場合、シェル自体が曲がったりしてたりするんですけど、シェルなりヘッドが曲がってるなりに調整してあげれば良い音は出せるので、それが感覚的にすごく分かってくるようになりましたね。
コツとしてはまず、”ゴール=良い音”を知ることかと思います。ゴールを知らないのに良い音が出るとかやってもしょうがないので、良い音だけを聴く、良い音楽だけを聴くような環境にいれば、必然的にどうすればゴールにたどり着くか分かってくると思うんですよね。Popsっていうジャンルは空間が全てで、ドラムだけじゃなくてギターやベース、それそれの定位も含めて“どれだけ隙間があるところに透き通る音を突っ込んでいけるか“が勝負だから、そうしたら絶対ドラムの役割って決まってくるので、まずは良い音を知ることが大事なのかなと思います。
※SADS公演での足元のセッティング。ペダルにはエリミネーターシリーズが使用されている。
Pearl:ドラマーの方々に対してメッセージをお願いします。
GO:“ドラム馬鹿になれ”っていうのが一つですね笑。あとはいろんな人と音を合わせていろんな音楽を聴くということですかね。それも、できればライブで生の音を聴くことが大事かなと思います。そして大好きな音楽を追いかけてとことん突き詰めてほしいですね。ドラムっていう楽器は機材も大きくて力仕事だし、消耗品も多いし、マイナスなイメージが多いんだけど、ロック創世記の時は“ドラマーのギャラが一番高くてどの楽器よりも一番重宝されてた時代”があったんですね。それを僕はドラムマガジンの人から聞いてすごく夢があるなぁと思って…。それまではドラムに対してネガティブな発言をしがちだったんですけど、その話を聞いてから“ドラマーの価値をみんな分かってたんだなぁ”ってすごく前向きな気持ちになれたのを覚えてます。コスパ考えてやるようだったらボーカルとかギターとかやった方がよっぽどいいのに、それでもドラムを選んでるドラマー達みんなを、僕は本当に愛おしく思ってます笑。